HICPM740レールマガジン第(号2017.10.02)
HICPMメールマガジン第第740号(2017.10.02)
皆さんこんにちは
総選挙が公示され急にあわただしくなりました。政府は経済指標が向上したと国産観光収入と新規雇用倍率が良好と経済政策が成功していると宣伝していますが、その一方で満足な食事のできない人が急増し、そのサービスの取り組みが拡大しているニュースも大きく取り上げられています。私が住んでいる多摩ニュータウンは都市全体が衰退の道を歩んでいることを、生活を通して感じています。多摩市には都市経営の政策がなく、政府施策住宅中心で固定資産税と住民税が増えてきて、地元政治家に集票のばらまきのため政治に関係する市民活動に多摩市の予算を配ることで政治が行われてきて、私たちが欧米の都市経営で見てきた専門家が行う「住宅の資産」を考えた都市経営は全く行われていません。
さて、『注文住宅』の連載をしていますので、「多摩ニュータウンの注文住宅の現況調査」を休日に実施していますが、率直に言って、あまりにも粗末な住宅ばかりで、住宅購入者が気の毒です。この「注文住宅」の記事は、日本の大学で教育していない「住宅の設計・施工の基礎知識」の教育です。
『注文住宅』
政府の戦後の住宅政策:品質とコスト
私自身が約半世紀前、住宅政策を実施しようと建設省住宅局に採用され、住宅建設課に配属されました。そこでは不燃都市国家建設のため木造建築を排斥し、鉄筋コンクリート構造共同住宅を建設する政策を進めるべく、建設省自身が標準設計を作成・普及する仕事を担当しました。1955年には日本住宅公団が創設され、鉄筋コンクリート共同住宅を中心に建設する住宅団地づくりが、英国のロンドン大火の経験に立った「都市燃化政策」と、戦後の住宅難時代に資産として公営住宅を形成する政策が始められました。アトリー労働党内閣に、エベネザー・ハワードの「ガーデンシティ」の理論「ニュータウン政策」に置き換え、わが国はそのニュータウン政策に倣って住宅団地建設が進められました。
当時のわが国の鉄筋コンクリート住宅は木造建築と比較して2倍以上の工事費であったため、公営住宅の所得に合わせるため、家賃計算の方法や土地の高密度利用の方法を取り入れる工夫をしましたが、直接工事費引き下げることが最大の関心でした。新しい鉄筋コンクリート造共同住宅が、新しい時代を象徴するような住宅であるためには、デザインが重要であると考えられました。そこで日本で最も優秀な建築家が集まっているとされた㈳日本建築家協会の全面的協力を受けて、協会が推薦する建築家に設計を依頼しました。そこで日本建築家協会会員が作成した鉄筋コンクリート造4階建て共同住宅が公営住宅の標準設計費で建設されなければ、都道府県で利用できないので、発注者である建設省住宅局は、納品された設計圖書の検収業務として建設工事費が発注通りの標準建設費でできるよう、工事費見積もりを検討する必要がありました。
コスト削減の努力:KJ部品の採用
その当時、私は政府の進める住宅生産工業化政策の一環として、公共住宅に使用していた木製の建築部品を工業化した公共住宅用規格部品制度(KJ)の整備を並行して担当していました。ステンレス流し、衛生陶器、スチールサッシ、換気扇、スチールドア、フラッシュドア、などの仕様を決め、公共住宅需要量の割り付けとの関係で、生産者と価格を決めたので、標準設計にはKJ部品の使用を前提に設計を行うことを条件にしていました。標準建設費内に工事費を収めるために壁や床の厚さや天井高さを圧縮し、8cm厚の床や天井高さ2.25mの共同住宅も設計されました。コストカットのために材料を最小限にする工夫をしました。そのため、設計図書を徹底的に検討し、材料と手間を最小にする方法を検討しました。そのとき工事費の積算と見積もり作業を行い、実施設計具から材料の使用数量を計算し、職人の手間を計算する驚くほど大変な仕事であることが分かりました。建築士で有名建築家たちは工事見積もりを厳しく行える実施設計が作成できず、自身の作成した実施設計で工事費見積もりができないことを知り驚きました。その後、半世紀の住宅との取り組みの中で、日本の設計教育は、「代願設計」教育で、基本設計はなく、実施設計も工事費との関係で正確にする教育は行っていませんでした。
その理由は、学校教育で社会が求めている住宅を設計する教育をしていなければ、設計した住宅を予定された価格で造るために取り組むべき教育はされていませんでした。例えば欧米で現在行われている「建築構造のスケルトンだけをつくり、居住者が内装や住宅設備を整備し居住者が未完成住宅を供給する」日本以外の国では「一般的な住宅のアイデァ」は、出されても実行には移されません。それは「基本コンセプト」がなく、住宅を「物づくり」と固定的に考えているためです。
同時代に建てられた欧米の住宅は増改築を繰り返して新築と変わりなく使われていますが、日本ではすべてスクラップ・アンド・ビルドの対象になり、鉄筋コンクリート造住宅の物理的寿命は60年とも、最近では30年とも言われています。欧米では善良管理義務を果たしている住宅の価値は「推定再建築費」で計算され、で「築後年数」が問題にされることはありません。そんなに「ストックの住宅」を粗末にする国は日本以外にありません。
欧米のニュータウンの住宅と日本のニュータウンの住宅
日本住宅公団が団地を開発し、特に日本最大の多摩ニュータウンを開発したときには、いつまでも国民の憧れの住宅地であり続けるものが造られている説明され、信じ込まされてきました。私自身その多摩ニュータウンに四半世紀生活し建設当時の期待は失われ、衰退化の道を駆け落ちている感じです。学校は閉校が相次ぎ、空き家は増加し、その周囲には墓地だけが盛んに開発を続けています。
日本で最初のニュータウンは、建設省が英国に技術官僚を派遣し、大阪の千里ニュータウンで大阪府企業局が開発した千里ニュータウンの住宅です。その直接のモデルとなった英国のハーローニュータウンには大学の建築家の学者・研究者も派遣され、ハーローニュータウンの住宅地計画をまね、日本でのニュータウンのモデルにしました。千里ニュータウンは衰退し、建て替えが進んでいますが、それをハーローニュータウンと比較したら日英の住宅地開発技術の差が分かります。ハーローが熟成した豊かな住宅地となり、住宅を購入した人の資産形成に寄与していますが、千里ニュータウンの計画は失敗し、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返し都市を衰退させ、その違いの大きさに驚かされます。日本と欧米の住宅とニュータウンの違いは、それらを設計し建設する設計の考え方、施工の技術、住宅地を経営管理する技術の違いのすべてにあるわけですが、その基本は住環境設計の思想を実現する人文科学(居住者の歴史文化)教育と工学(「差別化」のための物づくり)教育の違いにあるのです。
建築設計教育で何を教えてきたか
戦後70余年経過して住宅・建築・都市を過去・現在・未来と成長発展するものと捉え、計画し、設計施工する学識経験をもたず、行き当たりばったり「差別化」の技術開発に追われてきました。基本的な設計理論を学ばず、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返してきました。その結果、千里ニュータウンとハーローニュータウンの比較は、住宅によって国民を豊かにしてきた英国と、その逆に住宅により国民を貧しくしてきた日本の特殊環境を見る思いです。学校教育に責任を持つべき文部科学省は、日本の建築生産に関係する技術者の工学教育が、欧米の人文科学としての建築教育とは似て非なるもので、建築生産に多くの社会問題を生み出していることを知る立場にいて、その間違いを糾そうとせず、学生に間違った設計をさせ、その教育の改善が取り組まれていません。日本以外の国では、住宅を購入することで資産形成ができているのは、設計教育として正しい住宅設計が行われ、そのような住宅地環境が経営管理されているからです。
国土交通省が認めているように、わが国では国民が住宅を購入することで大きな損失を被っていることの原因は、建築士の住宅設計技術に重大な欠陥があるにも拘らず、それを改善せず、国民が住宅を購入することで資産を失う建築教育が行われてきた結果、国民に重大な損失を与えてきました。建築教育のうち、住宅設計の学識の基本であり、す建設工事の経営管理技術が、経済合理的に住宅を生産する技術の基本です。日本の大学での建築教育ではその設計・施工の基本的教育が行われていないのです。
米国の建築工事のための実施設計
欧米では、土地と住宅とは一体不可分で、建築物は土地を加工した恒久的な資産と考えています。建築設計は、土地利用として、土地を将来を見通して具体的に建設(加工)する設計図書を作成することと合わせて、設計図書通りに工事がなされている工事監理をする技術者を教育しています。住宅を設計する場合、建築主が帰属意識をもてる住宅を家計支出で購入でき、家族とともに成長するために、住環境の過去・現在・未来を一貫して貫く「基本コンセプト」を設計圖書の作成に先立って作成されます。「基本コンセプト」として重視すべきことは、開発計画が歴史文化的な視点で行われることと、そこに居住者の社会的属性や経済的な費用負担能力との対応です。それは日本の「フローの住宅」で取り組まれている販売目標(ターゲット)とは基本的に違います。日本の「フローの住宅」の経営は、顧客確保と販売の成約のできる経営を優れた業務と考え、それ以降のことは設計段階では、住宅環境のことも住宅の維持管理のことも基本的に全く考えていません。欧米の「ストックの住宅」の経営は、住宅購入者がその住宅地で生活することでその住宅資産価値を向上し、それを売却しなければならないときは、購入時の投資額に通常の投資以上の資産価値増(キャピタルゲイン)が期待しています。
日本では基本設計を行うために「基本コンセプト」をまとめる作業はなく、過去・現在・未来という連続性をもった時間軸の中で「ストーリー」と「ヴィジョニング」を考えることもしません。建築主の目先の要求を設計条件に基本設計が取り組まれるため、目先の具体的な家族の欲望の実現が盛り沢山の建築主の要求になっています。一方、欧米では、基本コンセプトを作成し、「ストーリー」と「ヴィジョニング」を検討作成する過程で設計の基本的な軌道が造られ、建築主の要求はその大きな軌道の上での基本設計条件とされます。基本設計が取り纏められることで、創造活動としての設計業務は完了します。
住宅の資産価値が維持されるHICPMがまとめた基本コンセプト
HICPMが2000年に開始した「サステイナブルハウス」の設計の「基本コンセプト」は、米国(NAHB)とカナダ(CMHC)が21世紀に向けて取り組んできた目標を学び、日本にも取り入れるべき4つのコンセプトとして整理しました。それはサステイナブルハウスの立地条件と居住者の条件をものにした「ストーリー」と「ヴィジョニング」を作成するときの指針で、以下の4要素です。
(1) 住宅購入者の家計費の支払い能力で購入できること(アフォーダブル)
(2) 住宅の資産価値が維持向上し、購入時より高く売却できること(ヴァリュアブル)
(3) 家族の成長や変化に対応して満足できる生活環境であること(フレキシブル)
(4) 安全で衛生的で維持管理費がかからず地球環境にやさしいこと(グリーン&セイフティ)
この4要素に建築主の希望事項を取り入れて「ストーリー」と「ヴィジョニング」が作成され、それをもとに基本設計条件を取りまとめます。基本設計条件は、建築主との合意を得たのち、基本設計業務が始められ、基本設計の成果は、基本設計条件と照合確認され検収されます。
米国の建築家の中には、基本設計(マスタープランニング)までしか行わず、その後は優秀な実施設計(インプレメンテーションデザイン)の知識と豊かな経験を持つドラフトマンに作製させます。建築家(アーキテクト)がドラフトマンに基本設計を与え、ドラフトマンの主体的な設計業務として実施設計が基本設計どおりに作成される業務を監理して作成させます。実施設計では、基本設計に基づき材料と工法を特定させ、工事が確実に実施できる設計圖書を作成させることになります。建築家が実施設計まで行なうことも、一般的には行われていますが、実施設計の目的は、基本設計を確実に工事として実現する実施設計図書を作成することですから、工事実施の施工知識が不可欠です。
米国の建築家の行う工事施工と実施設計
施工業者は工事費の見積もりを行なう場合、建築主に実施設計を基にした工事内容を質問し、それらを理解して工事費を見積もります。その際、建築主は設計者を工事業者への説明会に立ち会わせ、実施設計内容を施工者に説明させます。そのときの質疑応答は、工事見積書(工事費内訳明細書)と一体に工事請負契約書の正式書類となり、その内容は設計図書をより具体化したものとして、設計図書より優先する資料と扱われます。設計図書の内容を、お金で確定させたものが工事費内訳明細書です。設計行為を行うべき工事内容を材料と施工方法で特定する(ディファイン:定義)こととを、米国では実施設計業務と言います。その設計教育は大学の建築学(アーキテクチュアー)教育でも行いますが、建設工学(シビルエンジニアリング)教育です。実施設計業務自体には、創作的な業務はなく、基本設計で決められた設計を確実に工事に結び付ける技術と説明されています。その業務を専門に行う技術者をドラフトマンといい、設計図に記載する文字にまでこだわる経験と熟練に磨かれた職人技をもっています。
日本では設計条件を骨格として取りまとめた「概略設計」(欧米ではエスキース、下絵)を「基本設計」言い、それをもとに「実施設計」が始められます。欧米の「基本設計」と「実施設計」とはそれぞれの設計条件も設計目的も、「基本設計は創作的業務」と「実施設計は実務的業務」と違います。
米国のホームビルダーの業務とホームプランシステム
工事施工は実施設計に基づいて建設工事業者が行います。その中で住宅を専門におこなう建設工事業者をホームビルダーと言います。ホームビルダーは工事施工業者ですから設計は行いません。建築主が優れたデザインの住宅を建築家に設計を依頼しないで建築する方法として、現在ではホームプランを使った設計が行われています。それは注文住宅設計を行うことになれば設計業務費用が嵩むため、既成のホームプランの中で適当なものを建築主が選択し、ホームビルダーが選択し、それを建築主の要求に合うように調整(カスタマイズ)して住宅建設するもので、西欧社会では広く実施されています。
ホームプランシステムの活用は、既存住宅取引にも共通した内容で、建築主がその設計圖書によって、設計内容を具体的に理解し注文するもので、広義の注文住宅設計です。ホームプラン集の中から建築主が望む住宅を選択すれば、カタログに載った住宅の実施設計図書や建築設計詳細、さらには住宅に採用する材料や住宅設備、建具などのカタログも一緒に手に入れられます。ホームプラン集から選んだ設計図書をカスタマイズする仕事は、建築家でもドラフトマンでも、ホームビルダーも行ってくれます。ホームプランを発行出版社がホームプラン集に掲載するホームプランは以下の条件を満足するものです。
- 正規の建築設計技術を学んで建築家が恒久的な資産となるクラシックな設計図書である。
- 標準化、規格化、単純化、共通化が図られ、施工する建設職人が使いやすい
- 高い精度の実施設計で職人が仕事しやすく高い生産性が約束されている。
- 金融機関がモーゲージの対象にし、FHA(連邦住宅庁)の債務保証条件を具備している。
設計見積もり、工事見積もり、実行工事費見積もり
ホームビルダーは実施設計が出来上がるとその実施設計を使って工事費の見積もりを行いますが、基本的に使用する材料・工法・技能ごとに数量、作業時間、単価をもとに見積もられます。米国のホームビルダーは、「建設現場を生産工場と考えた製造業者」とその業務を理解しています。そのため、工事を安く生産することを重視し、現場の工事過程に介在する無理、無駄、斑を最小限にすることで工事生産性を高めます。非常に大雑把に言って、設計者の見積額に対しホームビルダーによる工事見積額は10~15%安くできると言われます。その理由は、設計者はその社会で一般的な条件で見積もるのに対し、ホームビルダーは、その手慣れた材料と得意な能力・経験を生かし、常時使っている下請け業者や材料取引業者を使うことで、「工事見積額」は「設計見積額」よりも10%程度安い工事費で仕上げます。
米国の請負工事費で見積もられる工事費は、基本的に実際の支払いベースの材料費・労務費で、日本に建設業者のような建材流通利益を掠め取ることは認められません。「設計見積額」と「工事費見積額」の違いは、下請け業者の専門性を生かし実際に安い工事費で下請けさせるためで下請けを叩き合わせるのではなく、発注規模、工事時期、施工条件等合理的な理由で安くできる下請け業者を選びます。
実際に工事請負契約が締結されてからが、ホームビルダーは、CM(コンストラクションマネジメント)技術を駆使して、工事請負契約額よりさらに低い価格で工事を行います。CM:経営管理技術(工事費管理、品質管理、工程管理)を行うことで、工事に介在する無理・無駄・斑を排除することで生産性を高め、時間当たりの工事粗利、時間当たりの労賃を高めます。CMを徹底して行うことで生産性を高め、支払総額は同じでも時間当たり支払額を高め、「実行費見積もり」を行ない、年間を通してみた場合の総利益や総賃金を高める経営努力を行っています。
生産性向上の成果
日本でもHICPMが会員を指導して行ったサステイナブルハウスでは、4カ月かけて1戸の住宅を建設していたホームビルダーに1か月以下で1戸の住宅を建設することで、工務店の利益は当初売上高の5%でしかなかった工務店が、通年で30%の粗利を獲得し、下請け業者はその賃金総額が4倍近くに増大しました。日本で取り組んだサステイナブルハウスは、その設計システムが標準化、規格化、単純化、共通化を徹底させたため、建設現場における職人の習熟効果(学習効果)により生産性を高めることができたものです。その裏には、米国やカナダでのCMの経験を設計システムにそのまま取り入れて読み替え実施したもので、低いCM能力で可能なシステムでした。
しかし、わが国では結果的にCM技術の成果が挙がってもそれを経営者個人の能力と勘違いし、CM技術を意識的に高めようとしませんでした。輸入建材買い付けによる利益が大きいと考え、工務店経営の関心が資材購入に向かい、CMによる生産性向上には向いませんでした。サステイナブルハウスでは北米のCM技術が組み込まれていましたが、工務店はサステイナブルハウス・ホームプラン・システムをそっくり受け入れようとしませんでした。個性的な設計にこだわったこれまでの設計は、輸入建材を利用した輸入住宅というだけで、生産性向上の成果が元の木阿弥になり、CM学習は中途で消滅しました。北米のように学校教育でCMを学び実践した人は CMの利益が体得されますが、学校教育にCM教育がないため、CM技術の利益が、技術知識として体得されないためです。
ゼロエネ住宅にしてコストダウン(カナダ。アメリカ)
昨年米国とカナダを訪問したとき、両国はいずれも日本以上に強力に「ゼロエネルギー住宅」を政府の官民共同で先端技術を住宅に取り込む政策(PATH)に沿って建設していました。その事業では、2×4スタッドは2×6スタッドになり、壁体内の6インチのグラスウールが完全に充填してありました。日本だと「ゼロエネ住宅」という「差別化」政策で住宅価格が高く設定されますが、米国やカナダでは、「ゼロエネ住宅」にして、住宅販売価格はそれまでより安くつくられていました。その理由は、NAHBが20年以上前にCMのテキスト『アメリカのコンストラクションマネジメント』(井上書院刊)で提唱したVA(バリューエンジニアリング)を実践したものでした。6インチ厚のスタッド間隔を16インチから24インチにすることで、住宅の構造性能を変化させないで、材料費と労務費のコストカットをしていました。米国では理論と実際の対応をNAHBの教育で経験しているため、合理的理論の実践が行われています。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷英世)