HICPMメールマガジン第752号(2017.12.25)
HICPMメールマガジン第752号(2017.12.25)
みなさん、メリークリスマス
今年最後のメールになります。今年はHICPMの会員の皆様がHICPMの原点に返って欧米に倣った住宅産業経営にするために、これまでの塔研究会の活動を原則支持し、ユーチューブの配信など、解り易い形で欧米から学ぶ取り組みを始めました。私自身5月には「アワニー原則」を確認するためカリフォルニアツアーを行ない、その成果の要約は「輸入住宅スタイルブック第18号に掲載しました。
また、12月6日HICPM/GKKセミナーではこれまでいろいろな形で調査研究してきた「住宅により住宅購入者が資産形成を実現できる方法」をエベネザー・ハワードのリースホールド経営に依る「ガーデンシテイ」から、ウォルトディズニーのフリーホールド経営による「ハワードの叶えられなかった夢の実現」と言われる「セレブレイション」までの150年の住宅地経営の歴史の中に、HICPMの会員が頑張ってきた多くのプロジェクトを一づけた小史を『HICPMビルダーズマガジン特別号』(定価1,000円)として発行しました。
『HICPMビルダーズマガジン特別号』
この特別号は、HICPM23年の欧米住宅産業からに技術移転の総括でもあり、現在、HICPM会員ボークスが田園調布で取り組んでいるTND開発に取り組んでいる事業に全面的な支援をしているHICPMの活動でもあります。このTND事業では、住宅産業が当面の利益を獲得することは、まず当面の事業目標から忘れてもらい、このTND開発の成果を自らの生活要求を満足することができると確信を持ってもらって購入してくださった消費者に次のような住宅地を当てえることのできるプロジェクトとして取り組むことになりました。
それは田園調布で生まれ育ち、そこで子供たちを育てている内海さんが、同じ田園調布に生活している人たちの多くの方が望んでいる街、「田園調布が開発されたとき開発英国や米国で取り組まれた「ガーデンシテイ開発」の憧れ、それを目標に掲げ開発をしてから、線が復興と経済成長の結果、現在の高額住宅地として人々の期待した住宅環境から乖離し始めた状態を見せつけられて、もう一度、開発時の原点に立ち返って、豊かな生活と新しい住宅購入者に将来に向けて確実な資産形成を実現できる住宅地」とするためのTND開発にチャレンジするボークス内海社長の「志」のTNDにより挑戦するプロジェクトに、HICPMは全面的な支援をすることにしました。
HICPMのTND取り組み小史
このTND計画には、HICPM創設に関係する約30年の前史があります。1970年代にカナダ政府の全面的は支援を受けて2×4工法を建築基準法に取り入れる取り組みが行なわれました。この2×4工法のオープン化がすべてのきかっけでした。その後1984年のプラザ合意を受け、政府が口火を切った「輸入住宅政策」により、「SVヴィレジ」が開発され、それに続き、ワシントンヴィレッジが続き、「神戸インターナショナル・ハウジングフェアー」(KIHF)が実施されたことが契機で、HICPMが創設されました。そこまでが私が建設省の官僚と民間企業の時代です。
HICPMは米国の住宅産業から技術移転を受けるため、1996年NAHBと相互友好協力協定を締結し、2000年にカナダのCMHC『HOME2000』と米国のNAHBの『21世紀のタウンハウス』を学び、会員を支援して取り組んだ20余の『サステイナブルハウス』プロジェクトに着手以来経験してきたノウハウを、現在、田園調布で取り組むプロジェクトの取り入れようとしているところです。HICPMにおけるTND開発は、NAHBの指導を受け、ケントランズ(メリーランド)を皮切りに全米のTND開発を紹介され、TNDの最初のプロジェクト,『シーサイド』(フロリダ)から遡って英国のガーデンシティガーデンサバーブ、それをモデルにしたニュータウンを調査し、ついに「ハワードが実現しようとして果たせなかった」「最初に入居した人に熟成した都市を提供する」ことにチャレンジしたディズニーの『セレブレイション』に何度も調査に出かけました。
政府の住宅政策による妨害
HICPMが日本政府の間違った住宅政策に妨害されて、合理的な住宅建設業経営を工務店に技術移転してきた23年間の取り組み同様、住宅を購入することで消費者が資産形成を実現するTNDによる住宅地経営もまた、「差別化」と「売り逃げ」を正当な住宅地経営のような宣伝する日本の住宅政策に妨害された、その住宅地開発から住宅地経営にくけて欧米で実践している「3種の神器」による住宅地経営が妨害されてきました。
住宅地開発は住宅を販売したときがその始まりで、そこに人々が生活を始めて住宅地開発事業が軌道に乗り、人々が生活を続けている間は終わることのない事業なのです。現在HICPMの会員である福岡㈱大建(松尾社長)は、居住者の利益をより高めるための住宅地経営に取り組んでおられる例外で、その住宅地経営奮闘記は「HICPMビルダーズマガジン」のに連載してもらっています。その経験の積み重ねがわが国の消費者に住宅による資産形成を実現することになると確信しています。
「3種の神器」による欧米の住宅産業
私たちHICPMが技術移転を受けている欧米の住宅産業は、「3種の神器」により、未来に向けた展望をもった住宅地経営を行ない、その中で計画修繕と善良管理義務を果たすことで、住宅地を常時じぇんせつした当時のデザイン、機能、性能を持続することで、居住者に高い満足を継続発展させることができます。多くに人たちが住みたいと憧れる住宅効用を提供する住宅地は、人びとはそれぞれ現在建設しようとする費用をかけないとその住環境を手にすることはできません。その結果その住宅地の住宅の価値は「推定再建築費」として評価されることになります。それが欧米の不動産鑑定評価方法による住宅の資産価値です。
推定再建築費は、建設当時の価格に比較して、土地、建材、労務費の全てが物価上昇にスライドして高騰するほか、そこの形成されたコミュニティが「3種の神器」(ハードなルール、そプトなルール、とHOA:ホームオーナーズアソシエイションという強制権をもって環境管理をする自治政府)によって守られている安心感が加算されます。欧米では物価が2-3%上昇するならば、優れた評価を受けている住宅価格は4-5%上昇しています。その住宅価格の上昇分が「キャピタゲイイン」と呼ばれる純資産(エクイテイ)の増加分です。
田園調布でボークスが取り組んでいるTNDプロジェクトは、米国のTNDプロジェクトを日本で実践するプロジェクトとしてその事業の内容の情報公開をHICPMの会員には継続的に行うことを予定しています。「12月6日のセミナー」では現段階の状況を報告説明してもらい、多くの参加者に大きな感銘を与えることができました。HICPMはわが国においても欧米において可能になっていることは可能にできるという確信の下に、その必然的理由を研究し、それを日本で実現する方法を検討し続けてきました。来年以降のこのプロジェクトの発展に向けHICPMとして努力するとともに、その成果がHICPM会員に広く受け取れるようにしたいと考えている。良いお年をお迎えになられることを祈っています。
前回に続き「注文住宅」の連載を継続する
本来の「基本設計」と「実施設計」
基本設計と実施設計とはその性格自体が違います。「基本設計」は人文科学的な領域の学問で、建築家による創作業務です。それに対し、「実施設計」は「基本設計」で定められた設計内容を具体的な工事として実施するために、材料と工法と職人の技能に対応する労務量とその必要経費を確認して使用方法を特定する設計図書です。欧米では、基本設計を行う建築家とは別に、材料と工事施工に精通して実施設計を専門的に手掛ける「ドラフトマン」と呼ばれる実施設計作成技能者(シビルエンジニア)がいます。建築家自身に実施設計知識と実務経験があって実施設計を作成する場合もありますが、建築家は基本設計までで、実施設計は建築家の支持でドラフトマンが作成することもよくあります。「基本設計業務」はゼロから建築を生み出す「創造的業務」であるのに対し、「実施設計」は、「基本設計」の内容を実際の建築工事できる施工詳細(納まり)と工事費用の裏付けをもった「実施設計」に作り上げる業務です。
基本設計も実施設計もできない建築士の行う「代願設計」
日本の建築士のほとんどは、基本設計をまとめる学識経験がないため、基本設計をまとめることはできません。そのうえ、基本設計を与えられても実施設計を作成できる学識経験がないのが一般的です。日本では確認が建築実現の関門になっています。そこで、確認申請書に添付する設計図書がまとまり、確認申請をするときの設計図書(代願設計)を設計図書と呼んでいます。日本で一般的に言っている「注文住宅」の設計図書は、建築主によって設計要求を設計図書に取り入れ、代願設計にまとめた設計図書を「設計図書」と呼んでいます。代願設計では、どのような専門下請工事業者と専門技能者が必要であるかを知って、工事内容を取りまとめます。そのようにして代願設計がまとめられたとき、建築主が支払える当初の「相場」単価の延べ面積を乗じた概算工事費で造ることができるかを確かめるために工事費の設計見積もりを行い、その工事費が建築主の予算範囲で出来るものでなければなりません。
「代願設計」は、確認申請を行うための設計で、建築士法や建設業法で言う設計図書ではありません。実施設計は工事請負契約書に添付する設計図書で、工事費を見積り、工事請負契約書に添付する設計図書です。「代願設計」ができても、設計を始める前に建築主との間で合意された「相場単価」に収まらなければ、建築主や資金的な対応はできません。「相場単価」に収めるため、住宅に使う材料と労務を「試行錯誤」を送り返し、目標とされる住宅建設価格となるように材料と工法とを建築主は選択させられます。その過程で、当初、建築主の要望を認め「仮押さえ」した材料工法は、「相場単価」で設定した工事総額に収まらないとして、工事請け負う契約に添付する代願設計から脱落します。
概算見積りでしかない工事費見積もりデータベースの未整備
わが国には住宅の設計段階で社会的に合意を得た「建築設計積算資料」自体が存在せず、また、実際の建材価格は複雑な流通と価格決定の方法によって、設計者である建築士が設計見積を正確に行うことは不可能です。本来、建築士自身も自分の設計業務で採用する建材や工法に関しては、建材及び労務の調達に必要な価格のデータベースを作成し、自らの行う設計内容に適した公示価格の積算見積もりができる「設計積算資料」を整備にしていなければいけません。建築士は自ら設計し、または、工事監理して建築工事を介して材料と労務に関するデータベースを常にアップ・トゥ・デイトし、自ら設計した場合、精度の高い設計見積もりができるように準備しておくことが重要です。
一方、熟練した住宅建設業者はこれまで実施した住宅建設工事の実績を基に、その建設業者が過去に実施した工事データを自社でデータベース化し、工事の都度データベースを更新し、いつでも有効に使えるデータベースにしています。それは新規受注の住宅の建設工事費を正確な「設計見積もり」するためです。言い換えれば、建設業者損をしないで確実に利益を上げられる最低工事費でできる実現性の高い工事を確実にするためにしなければならないことです。データベースは建設業者が継続反復して建設工事を実施するために、建築主の求めに応えて正確な施工見積もりを行い、入札や工事費の相見積もりを正確にするために不可欠なデータベースでなくてはならないもので、「工事積算資料」といいます。「工事積算資料」は将来の工事を獲得するためにも、実際に工事を実施するためにも不可欠です。
NAHBのCM(コンストラクションマネジメント)テキストでは、では、「請負工事の完成同様に重要な業務」と言っています。しかし、わが国では、重層下請け工事に依存していますが、実際の工事業者が支払らわれいる労賃や材料費に対する関心が低く、米国のホームビルダーのように、原則「一層下請け」でCMにより無理・無駄・斑を排除した建設工事の場合は、データベースの管理を熱心にしますが、わが国の重層下請け工事の場合には、最終工事業者や工事人への支払額には関心がありません。
設計見積もりと施工見積もり
建設工事の中心は、材料費と労務費です。このいずれも需要と供給との関係で絶えず変動し、固定されている価格ではありません。材料及び労務の購入(調達)価格は需給関係を反映して変動し、工事を行う社会の経済・環境でも価格は変動します。当然、材料と労務を建設会社が購入するわけですか、その購買条件(4W1H)によって材料費も労務費も変動します。これらの材料も労務も実際に購入契約を行うときと実際に材料と労務を使うときによってさらに費用は違います。材料も労務もその価格は固定しているわけではなく、購入条件により絶えず変動しています。建設業者は価格の変動について購入条件との関係をよく調査し、最も有利な条件で購入するように努めます。購入条件、計画変更や事故処理の条件、経済環境など(4W1H)があります。海外からの建材輸入の場合には、為替の決め方、輸送手段、支払い条件、事故等に対する保険などの条件により購入価格自体が変動します。その業務をコストコントロール(工事費管理)といっています
米国社会では、まず、住宅建設を設計段階で工事に用いる設計圖書を確定する作業を行います。その作業は設計者が設計業務を完了させるため、その設計圖書で工事を行なったら、最も高額な工事費でも建築主の希望価格の上限でできる設調達可能価格によって設計業務を完了させます。その段階で主要な材料は労務に関しては工事単価の検討もしますが、一般的には市販の信頼性の高い積算資料を基に工事費見積もりを行います。それを「設計見積」と言い、設計者の作成した設計図書が、設計業務契約で定めた業務成果が、建築主の要求に応えた設計業務成果であることを証明するものです。建築主が希望した価格でつくれない住宅の設計図書は工事に使えないため、建築主は受け取りを拒否できます。
CM(コンストラクションマネジメント)こそ、工務店の中心業務
一般的にいわれていることは、工事業者を決定するとき、そのような価格変動し続ける条件下で、建設業者は建築主の支払い能力との関係で住宅建設工事内容(実施設計図書)を、工事請負契約を締結して確定します。工事請負契約は、建築主と工事施工者(建設業者)との間で「工事費入札」や「工事費の相見積もり(見積合わせ)」という折衝をとおして工事業者と建設工事額を決定します。建設業者が、「入札」や「見積もり合わせ」をするとき、施工者の立場で行う「工事費見積もり」は、通常、「設計見積」を参考にして行い、設計見積もりと比較して10~20%安くなると言われています。それは工事業者ごとの施工管理能力や、得意な工事や得意な材料仕入れ方法や下請け業者を使うことによって、一般的な設計見積額より安く購入し、高い生産性で工事を実施できるためです。
元請業者(建設業者)はすべての下請業者と入札または「相見積もり」により下請工事額を決定しますが、そのときの下請業者の提示額は元請業者が工事請負人になったとき、その提示額で下請工事を行う義務となります。元請業者は下請業者に対し、入札や見積もり合わせで下請工事費を確定する上で、「禁反言の原則」に縛られます。それは見積もり段階で下請業者が元請業者に提出した下請工事費は、変更することはできない建設業法(慣習法)の規定です。住宅建設業者の業務は元請業者としての地位を確保するために入札か、見積もり合わせで低い建設価格の提示です。建設業者の経営業務は工事費の受注に成功することと、工事経営で工事により確実に利益を上がることです。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)