ゴシックリバイバル様式

ゴシック様式そのものは、 中世ヨーロッパで発展し、 教会建築の大きな担い手となったデザインである。 ゴシックという言葉の語源は、 ゴート人(現代のフランス)の建築様式という意味で、 この様式が生まれた当時にゴシック様式という名がついたわけではなく、 後世になって命名されたものである。

ゴシック様式は、 ロマネスク様式の発展したもので、 その基本的な相違は、 ゴシックのアーチは曲率の違う2種類のアーチを組合せて作るワンポイントアーチにより、方形又は円形以外の平面形にアーチを乗せられるようにしたことである。ロマネスク様式は、甚本的に円形アーチ又は円形ドームによって構造をつくっていたため、 その平面形は原則的に方形、円形など点対称形平面とせざるを得なかった。 イスタンブールにあるハギアソフィア寺院は、 ロマネスク建築の代表的な例である。

ゴシック様式は、 ワンポイントアーチにより天に向けて高いアーチをつくることができることから、 ローマカトリックとともに宗教建築のデザインとして豪華絢爛に発展していった。 しかし、 ルネッサンスに古代ローマ建築への復興が取り組まれ、 やがて宗教革命の嵐の中で、 ゴシック建築は暗黒なイメージをひきずって、 人々から見離されていった。


ストロペリー・ヒル(英国トッケンハイム、 1750-1776)

ストロペリー・ヒル(英国トッケンハイム、 1750-1776)

リンドハースト邸(設計:アレクサンダー・ジャクソン ・デービス、ニューヨーク、1838-1842、 1865-1867)。 この邸宅は 、 ハドソンリーバー沿いに建つコシックリパイパル様式の中でも最大の住宅である

リンドハースト邸(設計:アレクサンダー・ジャクソン ・デービス、ニューヨーク、1838-1842、 1865-1867)。 この邸宅は 、 ハドソンリーバー沿いに建つコシックリパイパル様式の中でも最大の住宅である


しかし、 その後、 18世紀に入り産業革命が始まり、 人々が経済的な利益の追求と物質的な豊かさを背景に、 享楽の生活が始まると、 心の貧しさや倫理への回帰が大きな振子のゆれのように戻ってきた。 心の豊かさや、 愛、 倫理は、 新約聖書の教えと一体となって、 神の播いた倫理観、 家族観が復活し、 人々が神の創った自然や過去の宗教を再評価するという形をとって現われた。

ゴシック建築様式を復興したコシックリバイバル様式は、 18世紀中半以降、 最初は貿易で大きな富を蓄積した貴族の中で、 やがては、 産業資本家の手による都市の豊かな自然の中に造られた邸宅建築へと利用されることになる。 ここにあげられたストロベリー・ ヒルは、 1750年、 ロンドン近郊のトッケンハイムにホーレズ・ウォルポール卿の建設したカントリーハウス(貴族の館)で、 もう一つのリンドハースト邸は、 1838-1842年にニューヨークに建設された実業家の邸宅で、 いずれもゴシックリバイバルの代表例といわれている。

このリンドハースト邸の設計者、 アレクサンダー・ ジャクソン ・ デービスは、 アンドリュー・ジャクソン ・ダウニングと並んで、 19世紀中半、 アメリカにおけるビクトリアン様式の邸宅建築、中でもゴシックリバイバル様式を有産者向けの設計として広めることになった中心的建築家である。 アンドリュー・ジャクソン ・ ダウニングは、 その後、 「ビクトリア ・ コテッジ ・ レジデンス」という郊外の邸宅建築の最初のホームプランを出版し、 その当時のアメリカの郊外住宅に大きな影響を与えることになった。


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