イタリアネイト(イタリア風)様式
イタリア風デザインは、 イタリアン ・ ヴィラ様式と並んで、 19世紀の中半から後半にかけて、 米国内で大変な人気を呼んだ。 これは、 米国が経済的に発展し、 絵画(ピクチャレスク)のように美しいランドスケープや、 建築に対する英国ビクトリアン時代の郊外住宅の影響が、 米国にも及んだためである。 英国から独立した米国人にとっては、 英国から伝わったビクトリアンデザインではなく、 それよりも古くからあって、 英国のビクトリアン様式のデザインの源流となった、 古代ローマのデザインの復興として現われたルネッサンスデザインや、 その源流へのより強い関心となったものである。住宅の軒を飾る装飾的な腕木(ブラケット)に特色のあるイタリアネイトは、 トスカナ様式、 ロンバルディア様式などのイタリアに起源を持つ様式とともにイタリアネイトアメリカ様式、 やがてはアメリカ様式と呼ばれることになった。
ここに紹介するイタリアネイト様式で造られたヴィラは、 1845年に建設されたニューヨーク州ロードアイランド、 ニューポートにあるエドワード ・ キングの別荘である。 これは米国内のイタリアネイト様式の代表的建築である。 この邸宅は紳士の住宅にふさわしい威厳とともに、1憂雅さを具備している。 しかし、それと同時に、 生活を亨受できる利便性と効率性をも兼ね備えている。外観のデザインは、 非対称形でダイナミックであるが、 非常に調和のとれたもので、そこには多種多様なデザイン案が採用されている。 ロマネスク様式特有のアーチが、 全体のデザインの甚調となるとともに、 屋根の庇の腕木(ブラケット)による張り出しが、 大きなデザインの特色となっている。
このような邸宅の1階は接客用室、 社会的空間が中心に配置され、 2階部分がこの家の家族の私室になる。 1階応接間の上階が、 夫婦の主寝室で、 そこにはバルコニーが設けられていて、 建物の外観デザインの大きな注目のポイントにもなっている。
また、 ヨーロッパ全体は、 緯度が高い地方に位置付けられていて、 各住戸の暖房には、一般的に暖炉が使われていた。 暖炉は甚本的に各室暖炉であることから、 高級な住宅には、 何ヶ所も暖炉が設けられることになった。 暖炉からの煙突は、 複数の煙筒(暖炉ごとに設けられる)を、 何本かごとにまとめて収容して設けられていた。 煙突の数が、 その住宅の豪華さを表わしているとされたため、 富裕者のシンボルとして煙突のデザインには、 大変な工夫が凝されることになった。