HICPMビルダーズマガジン第262号
HICPMビルダーズマガジン第262号(2018.11.15)
今年は現在の都市計画法が立法されて50年を迎えます。立法当時都市計画法は英国の都市農村計画法をモデルに将来の日本の都市計画を英国の土地に倣った秩序ある都市に整備するために立法されました。都市計画法は政府(建設省)立法でしたが、住宅局から建築行政の侵害を理由に立法反対が提起され、急遽、官房文書課の調整により現在の都市計画法に取りまとめられました。
1946年に日本国憲法が制定され、軍需産業(財閥)が廃止され、国家に軍需産業以外は存在せず、失業者が都市に満ちていました。そこに朝鮮戦争が始まり、日本が米軍の兵站基地になり、戦後のわが国の経済復興が始まりました。旧軍需産業やその下請け企業向け労働者向けの木賃アパートや文化住宅が大都市周辺の農地に数週間で建設され、入居されるほど、住宅困窮者で満ちていました。
道路、下水道、電気、ガス、水道のないところに住宅が建設され、電柱から電気を盗む(盗電)、汲み取りをしない水洗便所(浄化能力のない浄化槽)、灯油、練炭によるエネルギーなど都市・生活インフラなしの都市開発に入居者が殺到しました。都市スラムは、都市再生の将来的な負荷が増大し、都市環境問題が心配され、都市施設の整備を図る都市計画法の整備が必要とされました。
戦後の英国は世界各地の植民地を多く失ったにも拘らず、国家の経営を福祉国家に向け舵取りを行ない、グリーンベルト政策、都市計画、公営住宅制度など住宅・都市政策に大きな成果を挙げていました。わが国では戦前から内務省が英国情報、中でも、戦後英国では労働党政権が成立し、国民生活重視の政策が展開されたことを見て、英国を日本の都市政策モデルと考えられました。
都市環境を計画的な整備なしに都市の経済成長ははかれないと政府は考え、戦後の都市経済の発展のためには英国をモデルにした都市施設整備を先行させた都市計画こそが、わが国の都市の健全な発展の途と建設省では判断しました。英国の都市農村計画法をモデルに都市計画法を制定し、英国の都市計画行政に実施する方針の下、英国の都市計画に倣うわが国の都市政策方針が採られました。
都市計画法案がまとまった段階で、建設省内で住宅局が都市計画法成立すれば建築行政(集団規定行政)が都市計画法に吸収されるため新規立法に反対しました。都市計画行政(土木)と建築計画行政(建築)の行政対立が、民法第87条に根拠を持つことが判明し、都市計画法を英国の都市農村計画法どおりに倣うことは困難と判明し、新規立法は竜頭蛇尾の拙速的に終わってしまいました。今回、都市計画法制定50周年を迎え、立法当時には想定できなかった低い評価しか与えられていない英国のような都市形成ができなかった都市計画法立法の失敗の理由を総括し特集をしました。
目次
2.インターナショナル・アーツ・アンド・クラフツ
アーチボルド・ノックス;ティーとコーヒーサービス
3.カレントトピックス:
平成時代にわが国を襲った大災害とわが国の政治
4.松尾憲親の「荻浦ガーデンサバーブ」住宅経営奮闘記
「資産価値の上がる住宅地とは」(4)
5.特集:新都市計画法制定50周年:英国と似て非なる憲法違反の立法
(政治家、官僚、学者、建設業者の利権)
9.竹山清明の街並み講座
ポールグリモーのまちづくり―その2
10.澁谷征教の住宅デザインのワンポイント
南町田マークスプリングスの設計企画の裏話―マスタープランデザインの秘密
12.オランダ・アメリカ・日本の住宅)第41回)
経済成長と産業界の利益本位の住宅都市政策
14.「聖域なき構造改革」第45回
東京地方裁判所判事の行政処分迎合裁判
16.ア・フィールド・ガイド・トゥー・アメリカン・アーキテクチュアー(121)
(122)
18.CM学習の原点に戻って(13)
CMを構成するPEPSIの理論と実践(その6)
19「街づくり教科書」講座(第20回)
欧米の都市計画の考え方:使節都市計画と生活空間
20.書籍注文・編集後記