HICPMメールマガジン第745号(2017.11.06)

HICPMメールマガジン第745号(2017.11.06)

みなさんこんにちは

ドナルド・トランプ大統領が来日し、日本中がその話題で持ち切っています。

私はトランプ大統領はメディアの世界で活躍した経験を生かして、社会の反応を的確に受け止めることができるという能力では驚くべき人だと思います。思想家ではありませんので、私の期待する政治家ではありませんが、ロシア疑惑が騒がれている社会を背景に、安倍首相を完全に牛耳っている様子を見ると、すごい政治家であることは間違いないと思います。明日は北朝鮮に拉致された人たちの親御さんと面接し、どんな発言がなされるかをよく見たいと思います。

 

衆議院選挙で大勝利した自民党の経済政策は施工しているのでしょうか

安倍政権は選挙で大勝利をしましたが、野党の敵前内輪もめもさることながら、安倍内閣の経済政策がなぜ評価されたかにまともに反論と批判ができない野党の体たらくこそ問題だと思っています。私は、一つの問題提起をします。安倍内閣は小泉竹中内閣が行った徳政令により命脈を保ったことを知らなければなりません。その上に黒田日銀総裁は、国債依存に日本財政が債務を膨張させないために「ゼロ金利政策」を行ない、国債を日銀に抱えさせて日本経済を表向き混乱しないようにしています。1200兆円の国債もゼロ金利政策では債務は膨張させないで抑え込めています。

 

都市再生法という「徳政令」で日本経済は地獄に落ちることは免れた

小泉・竹中内閣のときは、国債が急膨張し、国家財政が破綻する危険を感じるようになり、財政は国債依存で国家運営を始めましたが、法人税を納められる企業は12%、企業は生き残りをかけて正規職員を非正規職員に転換したため、不良資産で首の回らなくなった企業は労賃支払いをそれ以前の半額以下に抑えて生き残りました。その結果法人税も所得税収も縮小し、国家財政は国政によって賄われ、国債償還の財源がなく赤字国債を発行しました。国家財政破綻を目前に控え、小泉竹中内閣は「都市再生法」という「徳政令」を発行し、不良債権に縛られていた企業の債務を帳消しにし、不良企業を担税力のある企業の変え、正規雇用を拡大し、法人税も所得税も拡大しました。

 

黒田日銀総裁の「ゼロ金利」に財政は救済されている

その結果安倍内閣になって財政バランスを2020年までにとれる観測もできるようになりました。

安倍内閣は日銀総裁の経済理論通り、「ゼロ金利政策」を一貫して踏襲しています。有効求人倍率は1.5という高い水準ですが、企業経営は厳しくて、基本的には非正規雇用賃金よりましな賃金水準で労働者は働かされており、労働者にはより良い就業機会がないのです。戦後の好景気時代の有効求人倍率以上の建材を造多と安倍内閣は自慢していますが、日本ほど国家が借金を抱え、その金利を押さえていれば、経済は安定していますが、貧困状態で安定しているのです。その一方では下流老人が増大し、マンション保有者のローン破綻は拡大し、国民は先行き不安で眠れなくなっています。

日本経済は「ゼロ金利政策」というまだ経験していない未知の世界に迷い込まされ、借金がその金利で膨張しないだけで、経済活動は堅調ではないのです。世界は高金利の戻ろうとしていますが、そのとき日本はどうなるでしょうか。読者の皆様のご意見をお聞かせ下さい。

 

先週に続き『注文住宅』講座を継続します

 

適法な建設業業務実施のための条件

建設工事が適法に行われるためには、まず、設計者が建築設計に関する正しい設計知識と設計技術をもって設計業務をしなければよい設計はできません。そのためには、設計者は建築士法で定めているとおりに「建築に関する学識と設計・工事管理経験」を有していなければなりません。しかし、建築士が担当した設計及び工事監理業務は、建築士の排他独占的業務として実施することが建築士法上定められていますが、建築士に建築士法で定められたような設計・工事監理業務の学識・経験が欠如しています。そのため、日本では建築士がその業務を実施した結果、その住宅を購入した国民が損失を被ることになりました。

住宅設計者に設計を依頼し、住宅建設業者に工事を依頼するとき、依頼される設計者及び施工者が建築主の希望する住宅をつくる学識経験を持つ者であることを予め確かめなければいけません。その選択の判断は、建築士法が制定されたときから、「建築士に設計・工事監理業務を依頼することで、不安は解消できる」と政府は説明してきました。しかし、建築士が消費者の希望する住宅を設計する能力を有するとは限らないことが分かってきました。特に国土交通省が平成25年公表した『中古住宅のリフォームと住宅不動産流通改善のラウンドテーブル報告書』の中で、日本では、「住宅購入者は例外なく、住宅購入後50年以内にその購入価格の50%以上の資産を失う」と明記しました。その住宅は、必ず建築士が設計・工事監理して造られた住宅です。ほとんどすべての建築士がその業務をとおして貧しい住宅を設計したわけですから、建築士に設計・工事監理を依頼すること自体が危険であるのです。

 

日本の建築士と米国の建築家

建築設計業務の内容として、住宅の品質(デザイン、機能、性能)要求とともに、住宅購入者の購入能力に適合した住宅要求とがあり、その両方を満足するものでなければなりません。日本の建築教育ではその両方を満足させるための基本設計や実施設計を作成する教育は行われず、国土交通省のレポート通りの「住宅を購入することで資産を失う」事態になっています。

米国では大学において人文科学としての建築教育を受け、設計・工事監理の業務を積んだ後、建築家試験に合格した建築家はその得意とする専門分野を生かした設計・工事監理を行なうように指導されてきました。全米ホームビルダー協会は、米国社会では、国民が正しく設計者及び施工者を選ぶことによって消費者に利益となく住宅をつくることができると選択方法を明らかにしてきました。「設計者も施工者も、それまでに住宅を設計し、施工した成果と同等の能力を駆使するわけですから、業者の選択に当たっては、過去の実績とそれに対する社会的評価(評判:レピュテイション)を確かめないといけない」とされてきました。

 

米国では住宅取引のうち約80%が既存住宅であるため、取引に当ってその住宅の既存住宅市場での価格の経緯が分かり、ホームビルダーの評判も建設した住宅の資産価値評価で決められています。同様に、既存住宅は実物を直接見て確かめられますから、確実にその住宅の設計及び施工能力を評価できます。

日本の住宅展示場のモデルホームは、ハウスメーカーが外部の設計者の力を借りる等して総力を挙げてつくっています。そのモデルホームは、消費者が設計を依頼する設計者の設計ではなく、工事を依頼する施工会社が造ったものでもありません。住宅購入者の購買力を逸脱した高額住宅を提供すると能力があると宣伝するためかもしれませんが、消費者はその能力を使う経済的能力はありません。そのことを知っていてつくられたモデルホームは、ハウスメーカーの活用する技術力や信用力を説明しているものでもなければ、住宅購入者の購入対象の住宅モデルでもありません。モデルホームは購入する対象ではなく、消費者の関心を引くための広告塔でしかありません。

 

注文住宅設計業務とモデルホームの関係

米国でも「ストリート・オブ・ドリーム」と言って住宅会社のモデルホームがあります。そのモデルホームは、住環境と一体的に設計され、最終的には売却します。モデルホームとして使うときは、その住宅の販売価格はモデルホームと同様な住宅を設計者と施工者が建設した場合、適正なモデルとされます。しかし、日本のモデルホームのように、実際の取引する住宅の何倍も高額な住宅を見せて、そのイメージで住宅を販売することは顧客を欺罔するとして詐欺行為として米国では禁止されています。

輸入住宅ブームのころ米国の設計によるモデルホームどおりの住宅を建てようと住宅会社に注文した弁護士が、米国のストリート・オブ・ドリーム同様に、モデルホームと同じ住宅を、住宅会社が供給する高級住宅の「相場単価」で契約を締結しました。しかし、実際に供給された住宅は、モデルホームどおりの入念な仕事ではない「詐欺」と訴えられ、全面的に工事をやり直しさせられました。日本の住宅展示場のように、実際に販売する住宅と無関係の高品質な住宅をモデルに、住宅販売をすることは、米国の見方では、日本の「不当景品表示法」に抵触する詐欺行為とも言われています。

 

 

わが国の住宅の価格は個人の年収の5-8倍もする高額な買い物です。モデルホームにはさらにその3倍近くの費用をかけています。住宅の価格と切り離して注文住宅の話はできません。購入価格の3倍以上もするモデルホームとは一体、何のモデルになるというのでしょうか。住宅の価格はその価値を表していることと同時に、その価格の住宅を購入する世帯の住宅に対する品質を満たし、家計費負担で購入できなくなっては意味がありません。住宅は、「価格相当の価値を持っていること」と、「住宅を購入するための住宅ローン返済が、住宅購入者の家計支出の範囲でできなくてはなりません。現在、日本で起きている「下流老人」に関係する多くの住宅問題は、貸家でも持ち家でも、その建設価格が実際の住宅の価値の2倍以上に高額で購入させられ、高額な家賃か、売却するときには半額以下にしかならない住宅であるため、すべての住宅居住者の貧困化の原因になっています。不等価交換販売により住宅を購入した人の持ち家売却は、購買額の半額以上の価値分を損失させられ、「中産階級」と信じていた人を「下流老人」に引きずり込んでいます。住宅購入者は高齢化し所得が減少し、住宅ローン負担が重すぎ住宅を手放さざるを得なくなったとき、住宅の実際の価値が露見し、「資産が負債」に転換するからです。

 

住宅展示場のモデルホームは「詐欺商売」の客釣りの餌

住宅展示場に展示されている住宅会社のモデルホームは実際に住宅需要者が購入することができる住宅とはかけ離れた品質と高額の住宅です。そこで展示されているモデルホームのイメージで、ハウス・メーカー・ブランドの信用力を販売しています。しかし、そのブランド力は「フローの住宅」としての広告宣伝力であって、住宅が購入された後の「ストックの住宅」の価値を保証するものではありません。実際に建築主の前に現れてくる設計業務を担当する人は、建築に関する教育を受けていなく、設計・施工の実務経験もない営業マンか、それと大差のない建築士です。その営業マンがハウスメーカーの設計システムを使って設計をまとめ、それ以外では建築士が設計をまとめますが、

建築士の建築設計能力も、建築士法で定めている設計業務能力を有しておらず、その設計で造られた住宅も、ハウスメーカーの住宅同様、その中古住宅価格は下落しているのです。建築士が対応しても、営業マンが対応しても、同じ結果でしかありません。ハウスメーカーは建築士法を守っても何の利益もないと判断しているから、形式上、建築士法を遵守して「建築士の名義借り」をして業務を行っています。住宅展示場に展示されているモデルホームも、消費者の購入する住宅の何倍もする高額なモデルで、消費者の購入額に見合わないもので、それが購入できるように騙すことは、「不当景品表示」で禁止されている欺罔です。購入の参考にならないモデルホームを使い成約に誘い込む営業は、詐欺の手法です。

最近多くの建築士が自分で設計した住宅ではなく、海外事例などで「イメージ合わせ」と言って顧客に夢を抱かせ、「注文住宅は建築士に依頼すれば、希望通りの住宅をつくることができる」と説明していますが、ハウスメーカーも工務店の行うモデルホーム営業と大同小異です。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)

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