クイーンアン様式
クィーンアン様式を構成するオリジナルデザインは、 アーツアンドクラフツ運動のデザインである。 アーツアンドクラフツは、 英国の国威発揚と一体となって、 英国人がその歴史を遡って世界に誇ることのできる伝統的デザインの発掘作業をした結果発見した3つの原型であるハーフティンバー、 パーペンディキュラゴシック、 石灰岩やレンガによる組積構造というドメスティックリバイバルに、 スピンドル(糸車)など建築装飾を組み合わせたものである。 そのデザインの共通した特色としては、 小さく区画したガラスで大きなガラス面を囲んだり、 主窓の上に浅い欄間を取り入れたり、 ベイウィンドウ(柱間一杯の張り出し窓)を設け、 煙突をレンガ積みでデザインするといったことである。
英国のクィーンアン様式を生んだアーツアンドクラフツ運動は、 ノーマン・ショウ、W・E・ネスフィールド、 E・W・ゴッドウィン、 B・チャプネイズ、 J ・S・スィブンソンなどによって展開された。マナーファームはB・チャプネイズの作品である。
アーツアンドクラフツ運動を象徴する建築物が、 ウィリアム ・モリスによるレッドハウスである。 これはモリスがフィリップ ・ ウェ ッブにロンドン近郊に建築してくれるよう依頼したもので、「新しい工芸文化を具現した最初の個人住宅で、 住宅の内部も外部も全体が統一的に意識され建築された住宅。 現代住宅の歴史の中で最初の事例」(ヘルマン ・ マセシウス著「英国の住宅」)である。
米国に渡ったクィーンアン様式は、 1884年カリフォルニア州ユーレカに建設されたウィリアム ・ カールソン邸に代表されるように、 極めて装飾性の高いデザインになっている。 この中には、 アーツアンドクラフツの原型になっているドメスティックリバイバル様式を誇張した、 ノーマン ・ ロックウェルの絵に共通する懐かしさが漂っている。