HICPMビルダーズマガジン第257号
BM第257号をお届けいたします
この特集「日本の注文住宅設計」は、筑波山の「ガマの油」の話を思い出してもらう取り組みでした。この特集記事を読まれることは、「日本の恥さらし」のような気がして、内心忸怩たるものがあります。私自身住宅官僚時代建築士法を所管し、建築士行政を3年間、建築士試験には足掛け5年間関係し、現在の建築士に対する監督責任があったことを、あらためて思い出されます。建築士の受験資格と建築士業務に関し、それを醜い状態にしてきた責任に関係してきたことを再認識させられました。
東京国立近代美術館で、ローマ、ロンドンを巡回した展覧会「日本の家 1945年以降の建築と暮らし」には、青木淳、アトリエ・ワン、安藤忠雄、石山修武、伊東豊雄、乾久美子、菊竹清訓、隈研吾、坂本一成、篠原一男、白井晟一、清家清、妹島和世、丹下健三、西沢立衛、長谷川逸子、長谷川豪、藤井博巳、藤本壮介、藤森照信、山本理顕、吉阪隆正、吉村順三、アントニン・レーモンドによる75件の住宅建築、400点を超す模型や手書きの図面、写真、映像などが展示されていました。
この展示会に展示されたものは、「日本の住宅文化」の恥さらしだと思いました。ここに列挙された建築家は日本の有名建築家ですが、日本が誇る住宅文化作品をまとめて展示したのではなく、戦後のモダニズムの紹介、西欧建築家の真似、歴史文化を否定した前衛建築、いずれも「日本の住宅文化」ではなく、外国人がこれらを「日本の住宅文化」と勘違いされたら日本人にとっていい迷惑で、取り上げられた建築家の中には、この展示を「私の意図と違う」という建築かもいるかもしれません。
特に鼻持ちならないものは、コルビジュエのかぶれの建築や、同時代に欧米で話題になったデザインを拝借し、それを独創的な日本の創作住宅文化と勘違いしているものです。独創的なアイデアもありましたが、そこには日本の歴史・文化や伝統によって創り出されたアーキテクチュラル・ボキャブラリーは存在せず、私たちが日本人としての「懐かしさ」や「誇り」を感じるデザインは見つけられませんでした。社寺仏閣、寝殿造り、書院造、数寄屋造りや田舎造りに繋がる日本の建築文化は見られません。
明治・大正に取り組まれた近代建築は姿を消し、歴史文化を捨象し、当時の時代風潮・機能主義の主張が「日本の建築」であったかもしれません。それこそ現代に繋がる使い捨ての住宅で、現代に何も伝えていません。わが国の誇る住宅文化を見出すことのできない「この世界を移動した展示会」の企画者が大きな間違いを犯していたようにしか思えません。現在日本の住宅は、この展示会の延長線上にあり、今回のビルダーズマガジンの特集は、この展示会の「成れの果て」のような気がしてなりません。
特集:「日本の注文住宅設計」:建築士法のモデル「米国の建築家法」と建築士の住宅設計の実情
2.インターナショナル・アーツ&クラフツ
---アーチボルド・ノックス:皿(ディッシュ)1903年
3.カレントトピックス:
ー--転換を迫られる近未来の注文住宅設計
4.松尾憲親の「荻浦ガーデンサバーブ」住宅地経営奮闘記
---第5回「なぜ日本の住宅地の資産価値が上がらないのか」(2)
5.特集「日本の注文住宅」:
---建築士法のモデル「米国の建築家法」と建築士の住宅設計の実情
日本の建築教育は欧米の建築家教育と全く違って、基本設計を人文科学教育(ヒューマニティーズ)としておこなっれおらず、また、実施設計を建設工学(シビルエンジニアリング)として行っておらず、専ら建築基準法の確認事務に必要な「代願設計」としてしか行っていない。欧米の建築設計は学校教育で建築ボキャブラリー(建築形態:フォルム)、「建築詳細:ディテール)、(建築装飾:オーナメント)を学習させ、建築物に建築思想を語らせることを建築設計と考えている。しかし日本では感情を表現するデザインを設計の目的と勘違いし、話題性のある意匠をすることに総力がかけられている。
欧米の建築教育で実施設計は、正確な工事費見積もりができる設計図書でなければならないとされているので、材料と工法とを特定できるものであることが実施設計の条件である。一方日本の基本設計も実施設計も概略設計で、工事施工現場で支持をする力をもたず、工事費見積もりもできないものでしかない。
10.竹山清明の街並み講座
---保存されている古代ローマの建築・パンテオンとその周辺の街並み
11.渋谷征教の住宅デザインのワンポイント(63)
---南町田のマークスプリング設計企画の裏話ー5
12.オランダ・アメリカ・日本の住宅(36)
---HOPEⅥとハイポイント計画
14.「聖域なき構造改革」第40回
---政・官・産で構成する護送船団の闇
16.ア・フィールド・ガイド・トゥー・アメリカン・アーキテクチュア―(111)(112)
---ヴィクトリアン様式
18.CM学習の原点に戻って(8):
---CMを構成するPEPSIの理論と実践(その1)
19.「街づくり教科書」講座(第15回):
---都市公園はだれのためのものか
20.書籍注文書・編集後記